2009-11-22(Sun)

海の見える街で(1)

秋の空は蒼く、何処までも蒼く、まるで世界の終わりまで続いているかのように見える海がそのまま空と繋がっているような錯覚を起こしてしまう。
海から吹き寄せる風はついこの間までの熱気を含んだ風とはうって変わり、海からの涼しげな風を陸へと運んできてくれる。
その風に乗って運ばれてくる潮の香りが髪をすり抜けていくのがとても心地良い午後雲一つ無い空に太陽がとても眩しく輝いていたから、彼女の紙袋を破って林檎達がはしゃいで飛び出していった。


「すみません!」
千秀が足下に転がってきた赤い林檎を拾い上げて辺りを見回すと、坂の上から転がってくる大量の林檎と、その林檎を追いかけて転がるように駆けてくる髪の長い女性の姿が目に映った。
「ごめんなさい!止めてください!」
その女性は長い髪を左手で押さえ、足の遅い林檎から順にひとつひとつ捕まえながら千秀に向かって叫んでいたので、千秀は当然の事ながら、脱走した林檎の捕獲に手を貸す事になった。
「すみません、ホントに、ありがとうございます」
彼女が息を切らせながら千秀の元に辿り着いた時には、あらかたの林檎は彼女と千秀の手の中で観念したようにおとなしく収まり、一つ二つ逃げ延びた林檎は道を外れ、ガードレールの下をくぐって海の中へとダイビングしていった。
「ああ、ごめん。二つほど海の中へ落ちちゃったけど。…それにしても、君、林檎でビリヤードでもしたのかい?」
あまり上手くない千秀の冗談を、彼女は乱れた髪を左手で整えながら笑って受け流した。
「お手玉ならするけどビリヤードは今度やってみるわ。…ごめんなさい、ちょっと持っててもらえるかしら?」
彼女は千秀に林檎を預けると、胸で結んでいるスカーフをスッと外して器用にも、そのワインやらブランデーの瓶を描いたスカーフを畳んで袋を作り上げた。
「ありがとう。それ、この中に入れちゃってもらえる?」
彼女はその袋を広げ、千秀の前に差し出した。
「大丈夫かい?」
千秀の問いに、彼女は夏風を思い出すような笑顔で笑って答えた。
「平気よ。この中に入れて、上の方をリボンで結んで抱えれば。ほら、巾着みたいでしょ?」
彼女はカチューシャの代わりにしていたライトグレーのリボンをほどくと、くるくるっとスカーフで出来た袋の口を結んでみせた。
千秀は黙って自分の着ていたチェックのジャケットを脱いで、彼女の肩に掛けた。それは、白いサテン地のブラウスにライトブラウンのロングのキュロットスカートだけ、という彼女の服装では、この季節には少し涼しすぎる印象を千秀が受けたせいだった。
「え?でも、それじゃ…」
「俺はちゃんと鍛えてるから。それ、またいつか会った時に返してもらえばいいよ」
彼女はすまなそうに笑って、落ちてくる髪をかき上げながらその巾着もどきの中から真っ赤に色づいた林檎を取り出して、千秀に渡した。
「ありがとう。私、このすぐ下の支店おみせで窓口やってるの。今度来てみて」
彼女が坂の下に見える小さな茶色い建物を指さして言った。
「…あれ、何のお店なんだい?」
千秀は時折前を通るそのお店の事を思い出そうとしてみたが、普段何気なく通っているためあまりよく思い出せなかった。
他人ひとのお金を数えて喜ぶようなお仕事よ」
彼女の答えに、千秀がいかにもけげんそうに眉を寄せて聞き返してきた。
「…サラ金?」
「ぶっ…似たようなものね。ただ、ウチのお店には一応H銀行って言う名前が付いているけど」
千秀の問いに彼女は一瞬吹き出して、それからおさまりきらない笑いの発作をひたすら抑えながら、それでもかろうじて営業用の顔と声を作り出したようだった。
「只今オートローンのキャンペーン中ですのでお車をお求めの際にはぜひ当行のオートローンをご利用下さい」
その声がしっかり1オクターブ上がっていたので、今度こそ本当に、二人は顔を見合わせて笑い転げていた。
「おれ、千秀って言うんだ」
千秀の言葉が聞き取れずに、彼女が首を傾げて聞き返してきた。
「ち…?」
「千に秀って書いて、ち・しゅ・うって読むんだ。変わった名前だろう?誰も一度では読んでくれないんだ。そのかわり、忘れられもしないけど」
「ふぅん。ありがとう、千秀くん。私は泉って言うの。みんな、『おせん』って呼ぶわ。じゃ、絶対来てね。待っているから」
名残の笑みを一つ浮かべ、後ろ向きに歩きながら千秀に向かって手を振ると、くるりと向きを変え、泉はその坂を駆け下りていった。
千秀の手の中には、小さな赤い林檎がひとつ、おとなしく収まっていた。


------------------------------------

続きを読む

スポンサーサイト
2008-04-03(Thu)

天袋の整理をしていたら出てきた。

むか~しむかしの同人。
これは某氏の私設ファンクラブに書いた原稿だけど、文章で載せると検索で引っかかるから画像でスキャンしました。

妹に挿絵描いてもらったんだけど、それは妹の絵なので切り取っちゃった。



1.jpg

2.jpg

3.jpg

4.jpg

5.jpg



へたくそだな~。f^_^;
ま、素人だし。若さ故の過ちだし。f^_^;


元ネタ、解る人っているかな?
2007-03-03(Sat)

元ネタ当てて下さい

-闇-


あたりは闇に包まれていた。光も音もない、上下すらない漆黒の闇の中に沙羅はいた。
 -ここは、どこなんだろう-
頭がぼやけて、良く解らない。ただ、闇の中を体が漂っているのだ。いや、それは意識だけなのかも知れない。
突然、意識が跳ねた。
 -何か…来る!-
普段は気の強いはずの彼女が、何故か、ひどい恐怖心に襲われた。
 -誰か!誰もいないのかい!シャピロ…-
思わず叫んだ。
 …シャピロ、シャピロ、シャピロ…
だが、闇の中には沙羅の声が響くだけで、あたりは何も、変化のないように思えた。不気味なほどに。
と、出し抜けに、瞳が光った。真っ赤に燃える瞳が、らんらんと輝きながら、沙羅の前に現れる。まるで、悪魔のような邪悪な輝きに思わずあとずさった。途端に、沙羅の周りが炎で包まれた。地獄で見る鬼火のように青白く輝く炎の中で、深紅の瞳が不気味に輝く。
 -私は神になるのだ-
遠くでシャピロの声が聞こえた。いや、聞こえたような気がした。沙羅は、恐怖のために、金縛りにあった。
 -すべてのものが、私の足下にひれ伏すのだ-
いや、気のせいではない、確かにシャピロの声は聞こえてくるでも、なぜ…
恐る恐る、目を凝らし、あたりを見回してみた。そこには地獄があった。
青白い炎に灼かれ、悶え苦しむ人々の姿が、現れては消える。
 -シャピロ!どこにいるんだい!シャピロ!-
必死に叫ぶのだが、どこにもシャピロの姿はない。邪悪な気配だけがあたりを包んでいる…
 -ふっ…はっははははは-
突然湧き起こった笑いと共に、青白い炎が真っ赤に燃え上がった。
 -そうかい…そうだったね。解ったよ…
  あんたは魂を悪魔に売り渡しちまったんだ!
  自分の野望と引き替えに…!
  あの、風の日に優しく抱いてくれた腕も、指輪をはめてくれた指も、甘いくちづけも、もう、何処にもない…あんたは捨てちまったのさ!あたしを!-
沙羅は、いつのまにか握っていた銃のトリガーを引いた。何度も何度も…

撃ちながら、涙がこぼれた。


 -沙羅!どうしたんだ!沙羅-
自分を呼ぶ声に、突然現実に引き戻された。目の前に、心配そうな忍の顔があった。どうやら本当に涙がこぼれたらしい。
 -何あわててんのさ!忍!-
あせって身を起こした。と、後頭部に激痛が走る。
 …そうだ、敵にやられたんだった…
そこは、医務室のベッドの上だった。
 -バカ!まだ寝てろ!-
言葉とは逆に、忍は優しく沙羅の頭に手をやった。
目と目があった。
 -ほう、気がついたか。-
 -案外元気そうじゃん-
雅人と亮が入ってきたとたん、亮が苦笑した。
 -おっと、邪魔したようだな。-
思わず忍の顔が真っ赤になり、伸ばしていた手を引っ込めた。
 -何笑ってるのさ!亮!-
叫びながら沙羅は、顔が火照ってゆくのを感じていた。

おわり



これっていつ書いた物だったでしょうか…
下手すると、20年近く立っているかも知れない。
書いたきり、恥ずかしくて人に見せられなかったモノです。
…何が恥ずかしかったかって、恋愛表現が恥ずかしかったの。ウブだったなぁ…しみじみ…


実は、他に自分自身一番気に入っていたとあるサークルの会報に投稿した作品あるんですけど、同人誌の束、何処に仕舞ったのか見つからなくて…こんなモノ引っ張り出してしまいました。


もし元ネタ解る同士のかたいらっしゃいましたらコメントお願いします~~~。

…いないか…(自爆)





後日談。
検索掛けて遊んでいたら、どーもこれを元にリメイク番を作ってどこだかで今年の2月から放映なんて記事を見ました…
キャラクターの顔立ちとかは全然違ったけど。

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
アニメ・コミック
941位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
少年向けコミック
195位
アクセスランキングを見る>>
リンク
FC2カウンター
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
SS (3)
月別アーカイブ
解☆説
好きな事を好きなように勝手に書きつづっている自己満足ブログです。基本、漫画・アニメ中心。時々手芸にお菓子に園芸・家庭菜園。
漫画・アニメについては発売日・放送日以降内容に触れておりますので、ネタバレNGのかたはご自分でお逃げ下さい。
パソコン閲覧を前提に文字修飾しておりますので、携帯ではかなり読みにくいと思います。パソコンで御覧下さい。
隙間時間を使って更新していますので、記事の更新が先で文字修飾は後回しになる事が多いと思います。
スパムが多いため、ガチガチに禁止ワードを設定しています。
コメント等書き込めない時はTwitterに@を飛ばしていただくのが早いかも。


管理人の好きカプ傾向です。
お嫌いな方はお逃げ下さい。
BLEACH


喜助×夜一

恋次×ルキア
ギン×乱菊

一護×織姫
雨竜×ネム
銀魂


銀時×月詠
沖田×神楽

土方×ミツバ
桂×幾松

近藤×お妙
高杉×また子
坂本×陸奥
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
プロフィール

miffy

Author:miffy

幼少期:リボンの騎士で育つ。


小学生~中学生:ベルサイユのばらでオスカル様に惚れ込む。


中学生~二十代前半:和田慎二にハマる。中でも「スケバン刑事」の麻宮サキには尋常でないほど惚れ込み、花とゆめが出る度にファンレターを送りつけていた。基本的に花ゆメイトだったため、柴田雅弘、河惣益巳、美内すずえ、三原順等がお気に入り。花とゆめ以外では、佐々木淳子はほとんど、青池保子は「エロイカより愛をこめて」、萩尾望都の「ポーの一族」、竹宮惠子の「地球へ…」、河あきらは「いらかの波」の他にもいくつか読んだような。とにかく、家を出る時には200冊以上の単行本と10年分以上の花とゆめを妹に渡してきた。
その他、好きだったアニメキャラクターは「あしたのジョー」の葉子さん、「六神合体ゴッドマーズ」のマーグ、「超獣機神ダンクーガ」の沙羅、「宇宙戦士バルディオス」のアフロディア、この辺が特にハマったキャラクター。


コミケ歴:詳しくは覚えていないが、確か21~22くらいの年齢にデビュー。アニメ雑誌で知り合った、二つ上のお姉さんに誘われた。長野から東京に出て行くのに、そのお姉さんは岡谷だったためわざわざ中央線経由で上京。一人で電車など乗った事のない箱入り娘だったため、切符の買い方間違えたりもした(つか、販売員指摘しろよ)。最初から軽いコスプレで参加。ダンクーガのローズだったため、簡単なワンピースなので手作り。以後どんどんエスカレートして、ダンクーガの沙羅、ガンダムのララァ、エルガイムのレッシィ、銀英伝のカイザーなどが記憶にある。
エルガイムのコスプレをしていた時に、同じくエルガイムのコスプレをしていたおにーちゃんにナンパ(?)され、友達と二人でサークルに仲間いり。サークル参加するようになり、同人誌作りに手を出す。絵が描けないので一応字書きさんとしていくつか書いた。印刷所に出入りして、本が出来る様子を見せてもらったりもした。これも結構良い経験だったりする。
25歳の時にたまたま人生の転機が訪れ、漫画・アニメ・同人からは足を洗うが、その後結婚した旦那が実は結構なオタク。しばらくは漫画やアニメからは遠ざかっていたが、子供が小学校高学年くらいになってキッズステーションでイロイロ見始めた所、昔のオタクの血に火が付く。


2006年の年末:BLEACHの一挙放送をきっかけにBLEACHにはまり、ここのブログを始める。その後、2009年には銀魂にものめり込み、オタク街道爆走中





検索フォーム
アルバム
269gで書いていた頃の画像を取り敢えずサルベージしてあります。リンクの切れている画像はこの中にあるはず。(;^_^;)リンクが切れていて、見たい画像があるかたは、その記事のコメント欄で言っていただければ余裕のある時なら探します。(;^_^A